あなたは、お葬式やご法事の時にはどのような服装で参列しますか?
おそらく【喪服】とお答えになるでしょう。
故人を偲び弔う場では必ず【喪服】を着用します。
仏事において喪服を着用するのは、もはや【常識】ですよね。
では、【喪服】にはどのような意味があるのか、そして、なぜそれを着るのでしょうか。
これをご存じの方は意外とおられません。
せっかく着用するのですから、喪服がどのようなものかをぜひ知っていただきたいなと思います。
《喪服はなぜ黒色なのか?》
あなたは喪服といえば何色をイメージしますか?
きっと『黒色』ですよね?
でも、じつは喪服って『白色』だったことをご存じですか?
今でもお葬式の時に白い喪服を着るという文化が残っている地域や国があります。
では、なぜ本来は白色だったはずの喪服が、現在では『黒色』として定着したのでしょう。
これには、大きく分けて、
- 明治期に欧米文化の影響を強く受けたから
- 戦没者の葬儀が非常に多く、すぐに汚れてしまうから
という二つの理由があります。
日本でも喪服が白色だった頃があります。
というか、白色と黒色を繰り返した歴史があるようです。
しかし、明治期の皇室の葬儀において、欧米諸国の国賓が『黒い服』を着用しており、日本政府の参列者もそれに合わせて黒い服を着たことから、現在でも【喪服=黒色】という認識が浸透しています。
また、第二次世界大戦中には多くの戦没者が出ました。
これにより、いたるところで葬儀が執り行われることとなりました。
当時は、喪服を貸衣装店で借りるというのが一般的で、多くの人が喪服をレンタルするような事態になりました。
そうすると、それまでのような白色の喪服だと、使用頻度が多くなればその分だけ汚れてしまうわけです。
そのため、貸衣装店の方でも、白色の喪服ではなく、汚れの目立たない『黒色の喪服』を貸し出すようになりました。
このことも『黒色の喪服』を着ることになった理由の一つです。
《お葬式やご法事で喪服を着る理由》
喪服とは、その名のとおり、
- 故人を偲び【喪に服す】ための衣服
のことをいいます。
喪に服すというのは、亡き人を悼み、派手な行動を慎む、ということです。
大切な家族を亡くした遺族は、喪服を着て、深い悲しみの中で故人の冥福を祈り、心を込めて弔います。
喪服というものは本来、遺族だけが着用するものでした。
これは【死】に対する考え方によるものです。
死というものは『穢れ』であり、できるだけ避けるものだと考えられています。
避ける対象となるのは、故人のご遺体はもちろん、ご遺体のそばにいる人にも及びました。
遺族というのは故人のご遺体の一番近くにいますので、避ける対象となります。
それで、喪服を着ることによって【遺族であること】がわかりやすいようにし、他の人が遺族に近づかなくてすむように配慮したのです。
それがやがて『故人を偲ぶ気持ち』を表すために、遺族でない人も同じように喪服を着用するようになりました。
そのため、今ではお葬式やご法事の時には参列者全員が喪服を着て故人を偲び供養をするのです。
《喪服はあなたの【故人を偲ぶ気持ち】を表現するための服装です》
喪服は、元々は故人の遺族が【喪に服す】ための衣服です。
それを、「私もご遺族の方々と同じように故人を偲び弔わせて頂きます」という意味で、遺族ではない人も同じように喪服を着るようになりました。
ですから、喪服を着ることは、心から故人を偲び、心から故人の冥福を祈り、心から故人に感謝する、ということなのです。
つまり、ただの慣習として喪服を着用してはいけないわけです。
少し大袈裟かもしれませんが、喪服は「ご遺族の悲しみに寄り添い、自分もご遺族と同じくらいしっかりと故人の供養をしよう」という心構えで着用するようにしましょう。
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