あなたは『お地蔵様』という仏様をご存じでしょうか?
お地蔵様は観音様と肩を並べるくらい有名な仏様で、いろんな寺院や道沿いなどいらっしゃいます。
当院にもお地蔵様がおられ、いつも優しい顔で私たちを見守ってくれています。
お地蔵様は多くの人たちに親しまれていますが、具体的にどのような仏様なのかをご存じの方はあまりおられません。
私たちにとって馴染みの深いお地蔵様とは一体どのような仏様なのでしょうか?
《お地蔵様の名前の意味》
まず、お地蔵様のお名前の紹介をします。
というのも、私たちが日頃『お地蔵様』と呼んでいるお名前は愛称みたいなものだからです。
本当のお名前は【地蔵菩薩(じぞうぼさつ)】という菩薩様です。
インドの古い言語であるサンスクリット語だと『クシティカルバ』といいます。
『クシティカルバ』というのは、『クシティ=大地』と『カルバ=胎内(蔵)』が合わさった言葉で、これを訳すと【地蔵】となります。
【菩薩】というのは、仏様として最上級の実力をお持ちでありながらも、あえて私たちの生きる世界に留まり、すぐ近くで見守って下さる仏様のことをいいます。
お地蔵様はずっと私たちの近くにいて、大地のようにさまざまな生命を生み出し、その生命を育み、そしてあらゆるものをやさしく包み込んで受け入れてくれる、そんな仏様なのです。
《お地蔵様とは何をしている仏様?》
あなたは、お地蔵様といえばどんな姿をイメージしますか?
頭はツルツルの丸刈りで、長い杖を持っていて、赤い【よだれかけ】をしている、みたいなイメージでしょうか?
ところで、あなたがイメージしているお地蔵様は『立っている姿』ではありませんか?
お地蔵様には、『立っている』仏像と『座っている』仏像があります。
そして、『立っている』仏像の方が多いです。
お地蔵様は「私は苦しんでいる全ての者を救うぞ!」という誓いをたてて、それ以来ひたすら私たちを救うために奔走してくれています。
忙しくて座っている暇がほとんどないので『立っている姿』が多いというわけですね。
お地蔵様は【六道(ろくどう)】で苦しむ者の全員を救う仏様だと言われています。
【六道】というのは、
- 天道:基本的には自由だが、ある日急に全く自由がなくなる世界
- 人道:いろんな苦しみや楽しみがある世界
- 修羅道:争いごとが絶えない世界
- 畜生道:本能のままに生きてしまう世界
- 餓鬼道:飢えや渇きの苦しみを受け続ける世界
- 地獄道:あらゆる苦しみを受け続ける世界
の《6つの苦しみの世界》をいいます。
ですから、お地蔵様はこの【六道】の世界すべてを休みなく走り回っておられる、とても慈悲深くてありがたい仏様なのです。
また、お地蔵様は慈悲深いだけではなく【道の案内役】をする仏様だともいわれています。
お地蔵様はよく【道沿い】に立っていると思いませんか?
人はどこかへ移動する時には【道】を通ります。
つまり、道または道のそばにはたくさんの人が集まります。
人の数が多いほど、そこには【救いを求めて苦しんでいる人】も多くいることでしょう。
そんな人々を救うために、お地蔵様はたくさんの人がいる【道沿い】に立っていらっしゃるのです。
ですから、【道の案内役】といっても、《〇〇市△△町》みたいに具体的な所在地へ案内してくれるというわけではなく、『苦しみの無い状態』となるための道を示して下さるのです。
《お地蔵様は【子ども】を守る仏様でもある》
お地蔵様といえば【子ども】を守る仏様としても有名です。
地域によっては毎年8月24日に『地蔵盆』という、【いつも子どもたちを見守ってくれているお地蔵様に対して、子どもたちが主役となって日頃の感謝をお伝えする行事】をしています。
『地蔵盆』では、近所の子どもたちが集まって、みんなでお地蔵様をキレイに掃除して、たくさんのお菓子類をお供えし、最後にそのお菓子を子どもたちで分けて持ち帰るのです。
子どもを守る仏様としてお地蔵様がみんなから親しまれていることがわかりますよね。
また、お地蔵様は【亡くなった子ども】もちゃんと守り導いてくれるのです。
昔から、子どもが親より先に亡くなってしまった場合、その子どもは【賽の河原(さいのかわら)】で石を積んで『石塔』を作るといわれています。
ところが、もう間もなく石塔が完成するというタイミングで、どこからともなく鬼がやって来て、子どもたちが一生懸命に積んだ石を崩してしまうそうです。
子どもたちは泣きながら再び石を積み始めます、そしてまた鬼によって崩されるのです。
これを何度も繰り返すうちに子どもたちの小さな手は傷だらけになり、辺りの石は血で赤く染まります。
そんな子どもたちを救うため、お地蔵様が駆けつけてくれて、子どもたちと石塔を鬼から守って下さるのです。
お地蔵様は、【生きている子ども】も【亡くなった子ども】もしっかりと守って下さるありがたい仏様なのです。
《お地蔵様はいつも私たちのそばにいて下さる仏様です》
お地蔵様は、いつでもどこでも私たちのことを優しい眼差しで見守ってくれています。
そして、【六道】の世界で苦しんでいる全員を救うために、休むことなく走り回っておられるのです。
また、子どもたちをしっかりと守り、正しい方へと導いてくれる仏様でもあるのです。
本当に慈悲深くてありがたい仏様ですよね。
それにもかかわらず、たまに「道端におられるお地蔵様には手を合わせてはいけない。」という人がいます。
これは、『お地蔵様に救いを求めて寄ってきた悪い霊が、手を合わせた人に憑りついてしまうから』という理由のようです。
でも、そんなことはありませんから安心してくださいね。
悪い霊が【救いを求めている】のなら、あなたではなくお地蔵様に寄り付きますし、仮に【悪さをするため】にあなたに憑りついたとしても、すぐ目の前にいるお地蔵様が即座に引き離して下さいますから大丈夫です。
ですから、お地蔵様の前を通る時にはちゃんと手を合わせるようにしましょう。
そして、『いつも私たちのそばにいて下さる』ことに対する感謝の気持ちをしっかりとお伝えしましょう。