ようやく日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。
このワクチン接種によって、世界中を巻き込んだ新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかることを祈るばかりです。
皆さんもこれまで感染予防対策で何かと苦労をされたことでしょう。
ウイルスの脅威に悩まされたこの一年は、世界中の人にとって【四苦八苦の一年】でした。
この『四苦八苦』という言葉は、じつは仏教からきているものです。
仏教を開いたお釈迦様は、私たちがいるこの世界を【苦しみの世界】だとおっしゃいました。
たしかに人生は思い通りにならないことばかりですし、抱いた夢も必ず叶うとは限りません。
しかし、必死に努力を続けた結果・・・それでもやっぱり報われないことが多々あります。
どんなに一生懸命に真面目に生きていても、すべての人に必ず苦しみはやって来るのです。
お釈迦様は、「人は生きていくために避けては通れない【8つの苦しみ】があるのだ」という教えを説いています。
8つというのは、
- 『生苦』⇒生まれる環境や親を選ぶことができない苦しみ
- 『老苦』⇒年齢を重ねるにつれて徐々に体力や気力が衰えていく苦しみ
- 『病苦』⇒さまざまな病気にかかり痛みなどに悩まされる苦しみ
- 『死苦』⇒人には寿命があり、いつか死を迎えなければいけない苦しみ
- 『愛別離苦』⇒愛する人といつかはお別れをしなければいけない苦しみ
- 『怨憎会苦』⇒嫌いな人と顔を合わせたくなくても、合わせないといけない苦しみ
- 『求不得苦』⇒欲しいものが手に入らない苦しみ
- 『五蘊盛苦』⇒心や体を思い通りにできない苦しみ
です。
この中の①~④までは、基本的な4つの苦しみとされており、『四苦』といいます。
そして、『四苦』を含む①~⑧これら8つの苦しみのことを『八苦』といいます。
ここから、あらゆる苦しみを意味する【四苦八苦】という言葉が生まれました。
この8つの苦しみの中でも非常にツラい思いをするのが、【⑤『愛別離苦』⇒愛する人といつかはお別れをしなければいけない苦しみ】ではないでしょうか?
固い絆で結ばれた親子であっても必ず【別れ】はやってきます。
親が亡くなれば子は悲しみの涙を流し、子が先に亡くなれば親は声を上げて嘆き悲しみます。
夫婦にも親しい友人にも、いつかは必ず悲しい【別れ】がやってくるのです。
【別れ】というのは避けられない【この世界の掟】ということですね。
しかし、人は悲しみに触れることで、より深い『優しさ』を知ることができるのもまた事実です。
お釈迦様が「この世界は苦しみの世界である」とおっしゃったように、誰も【苦しみ】を免れることはできないのです。
じつは、真言宗を開いた空海さんにも悲しいお別れがありました。
空海さんの弟子であり、また実の甥でもあった【智泉】さんが亡くなった時に、「この世の悲しみや驚きは、すべて【迷い】が生み出す幻にすぎないことは分かっている。しかし、それでも君との別れは涙せずにはいられないのだ。」
とおっしゃり、人目をはばからず泣いたそうです。
そして四十九日忌法要の時にある歌を詠まれました。
それは、
- 『阿字の子が 阿字のふるさと立ち出でて また立ち帰る 阿字のふるさと』
という歌です。
【阿字】とは大日如来という仏様を表し、【阿字のふるさと】は大日如来のおられる清らかな世界、いわゆる『あの世』のことをいいます。
これは、「私たちの誰もが元々は阿字の世界にいて、修行のためにこの世界へ生まれ、そして再び阿字の世界に戻るのだ。」ということを詠んだ歌です。
一般的には人が亡くなると「あの世へ行く」と言いますが、この歌では「あの世に帰る」と表現されているのです。
つまり、亡くなった人とは再びあの世(=阿字のふるさと)で再会することができるということです。
愛する人とのお別れは悲しみの極みです。
しかしあの世は愛する人と再会できる場所なのです。
また会えるその日まで、私たちは今をしっかりと生きていかなければいけませんね。